◆経理等の処理もくじ>IV 経営継続に必要な処理>1 経理等の処理
1 帳簿類の整備
会社の設立時の帳簿類においては、通常、税理士や経営指導員等から勧められたように整備するようになるだろうが、最も簡単な方法は会社の側で現金出納帳だけをつけることである。それ以外はたとえば、普通預金通帳のコピーとか車のローンの明細表とか、必要なものをそのまま会計事務所等に渡して処理してもらう。そうすれば一つの形として総勘定元帳から決算書まで作成してもらえる。
もちろん会社側で会計帳簿一式を作成できればそれに越したことはないし、いずれはそうならなければならない。業務に慣れる余裕のない設立1〜2期程度のみに限定して、会計事務所の理解を得て出納帳だけ、あるいはそれに近い形で済ませてしまうのも有効な方法である。その間、会計事務所等の処理の仕方を学び、自分で(自社で)やるときの参考にするのである。 自分で経理処理する場合はコンピュータ利用により非常な省力化が出来る。店頭に並んでいるパソコンの経理処理ソフトは3万円程度の安価なものでも仕訳のQ&Aがあったり、似通った仕訳の事例からその取引の仕訳を選べるなど、素人にも比較的簡単に高度な機能を利用できるようになっている。後述の貸借対照表、損益計算書を作成するには、簿記の手法で日々の取引を経理処理する必要があるため、自分で経理する場合にはパソコン活用は有力な武器となる。また、蓄積されたデータは表計算ソフト等に読み込ませて自由に分析加工できるなど、デジタルデータ化するメリットは大きい。 なお、試算表(毎月の概略の科目残高推移表)は必ず翌月の中旬までに作成したい。事業プランと実績との相違点を軌道修正するなど、早期の経営判断に欠かせない資料であり、また、月々作成していることは第三者からの信用の元でもある。 A 現金出納帳の作成…商売の命
現金出納帳は自分が会社を経営して、その結果をみるための第一歩の手段である。設立当初の場合、確実に現金の入出金から日常の取引は動いていくものである。企業会計を行っていく上で日々のそうした取引を記帳していく帳簿が現金出納帳である。
記帳の仕方としては、文字どおり現金が動けば記載するのが第一の原則である。すなわち収入となれば入金、支出となれば出金という具合である。第二の原則としては現時点での残高を示すことである。いま会社の手持ちの現金はいくらなのかをその場で確認できるようにしておく。 ・現金出納帳は会社の金銭的業務日誌である ・公私混同は絶対に排除する ・会社の実体を把握して経営改善の資料となる ・第三者(税務署、銀行)からの信用のもとである ・従業員等からの信頼が得られ、会社の基盤が安定するなお、消費税について、免税事業者は税込み処理をすることとなっている。つまり、消費税額は本体価格に含めて記帳すればよい。 また、現金出納帳を記載していく上で、現金と同じお金ということでつい混同してしまうものに普通預金がある。会社を作れば、まず間違いなく普通預金口座を開設し銀行取引をする。そして手元の現金を預けたり、逆に口座から引き出したりするわけだが、その際の現金出納帳への記載がうっかりしてしまいがちである。同じ会社のお金でも手元の現金と銀行の預金とでは運用の形態がまったく異なる。したがって次のことを心掛けたい。
B 預金の管理(1)当座預金
当座預金の入出金を漏れなく記載するのが、当座預金通帳である。普通、設立直後の会社は、当座を必要とするケースが稀であるし、また銀行が開設を引き受けてくれないケースが多いので当座預金の存在そのものがないわけだが、もし当座を開設できたら、せめて小切手の支払明細を記入した支払い専用の小切手内訳帳だけでは作っておきたいものである。ただし、当座預金の入出金の実績は、毎月銀行から当座勘定照合表として送付される。
小切手、手形は当座預金で決済される。また、諸経費の口座振替契約に当座預金を使うこともできる。しかし、この預金の残高不足はただちに不渡り事故となる。これを防ぐために、小切手、手形の振り出し時点で確実に金額、決済日を把握しておく必要がある。管理するのは自分しかいない。 当座預金に入金する場合、あるいは当座預金から現金を引き出す場合には現金出納帳に当座入金、もしくは当座出金として、同時に当座預金出納帳には現金入金、現金出金として記帳しておく。 (2)普通預金
普通預金の入出金を漏れなく記載するのが普通預金通帳である。しかし、普通預金は入出金金のたびに預金通帳に記帳がなされる。よって、特に会社で帳面を作って記帳する必要はとりあえずない。ただし、普通預金出納帳を作らないで通帳記入するだけで済ませる場合も、次のことに注意したい。
C 元帳で勘定科目を整理
会計帳簿を作成していく際に、取引の内容を示す勘定科目ごとにまとめていったものが元帳、すなわち「総勘定元帳」である。たとえば元帳で交際費という項目をみると、その年度の交際費の支出を一覧することができる。
この帳簿の作成は会計帳簿の中の根幹となるものであるが、会社ではとりあえず作る必要はない。会計事務所のコンピュータでやってもらったほうがよい。すなわち先の現金出納帳をもとに、会計事務所の方で簿記上の手続きとしての仕訳をしながらコンピュータに入力していく。同様に普通預金のコピー等からも仕訳をし、入力する。それらのデータが各勘定科目ごとに集計され、元帳は自動的に入力される。 なお、出納帳等に出てこない次のような取引は、別に入力しなければならない。
D 帳簿を通しての経営状態の把握
開業して数か月経過する(ここでは半年とする)と、その実績が数字で表れてくるわけだが、それを集計して一覧にしたものが試算表である。
すなわち先に述べた現金出納帳、普通預金出納帳などのデータをコンピュータにインプットして資産、負債、資本の三要素による損益の状況を表示するものである。 「残高の状況」とは、開業半年後の現金以下各勘定科目の残高ということになる。つまり、たとえば半年間現金なら現金が増えたり減ったりした結果としての半年後の時点の数字である。 一方「損益の状況」は、収益(売上など)と費用(仕入、経費など)の同じく半年後の数字であるが、残高とは次の点で大きく異なる。すなわち、収益も費用も半年の累積値であるということである。売上げ返品や仕入れ戻し等があれば、収益や費用が減少することもありうるが、通常の流れとしては、日々の取引によってこれらは積み重ねられていくものである。その積み重ねの結果として半年後の収益・費用の合計額が表示される。 そして「残高の状況」として[資産−負債−前期末の資本=当期利益]が、「損益の状況」として[収益−費用=当期利益]が表示される。 この2つの形から導かれる当期利益は同じ額であり、「残高の状況」において表示される当期利益はその分に相当する資産がこの半年の間に増加したことを意味し、「損益の状況」において表示される当期利益は半年間に獲得した“もうけ”ということになる。 試算表は「残高の状況」から翌年以降の資金繰りや、支払うべき債務のチェック等もできるし、「損益の状況」から粗利益率の妥当性や各経費のかかり具合等各種の経営情報を得ることができる。試算表は会社のタイムリーな状況を数字で表すものとして、最もポピュラーに利用されている。そしてこの「残高の状況」と「損益の状況」を1年の決算において最終的にまとめたものが、前者は貸借対照表(バランスシート)、後者は損益計算書となる。 E 決算
企業は毎年1回、1年間の経営活動の結果として決算し、利益がいくら生じたのかを算出しなければならない。ただ、設立1〜2年の会社としては、決算をすることの意味は確定申告という問題がまず第1番にくることも事実である。つまり申告作業をするためには所得を計算する必要があり、そのために決算をして利益を算出しなければならない。
なお、個人事業の所得は、社長の給料がゼロの場合の法人所得と同じものといえる。個人事業では経営者の給料をとることは税法上認められない。つまり、事業の所得の中から事業主の生活費を引き、残ったものが実質的な事業の利益だといえる。逆にいうと、生活費は事業主の給料と考え、生活費を毎月一定額とすれば計画経営に役立つ。また、この生活費は損益計算書では把握できず、貸借対照表が必要となる。 決算作業の具体的なものとして、次の決算書の作成がある。
◆会計帳簿の流れA 日々の取引と帳簿の関係
↓ B コンピュータへの入力
C 総勘定元帳
↓ D 試算表
E 決算
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