◆税務の手続き

もくじ>III 開業手続き>3 税務の手続き

1 税務署への届出等

  毎年の所得が元になる税金は、国税の所得税(法人税)、都道府県税の事業税、地方税
 (都道府県税、市町村税)の住民税などあり、それらは所得税(法人税)計算がベースと
 なります。
  特に個人住民税は、所得税申告書を提出することで、別途申告は不要な仕組みとなって
 いますので、国税手続きをまず重視して進めましょう。

 A 青色申告の届出

  青色申告とは簡単に言えば、所得税の確定申告にあたって青色の確定申告書を提出する
 ことである(これに添付して提出する決算書も白色申告者とは異なる)。青色申告には下
 記のように大きなメリットがあるので、ぜひこの承認申請手続きをしておきたいところで
 す。
  この手続きをしないと白色申告することとなります。

  青色申告に関する詳しいことは、国税庁のホームページをご参照下さい。
   ⇒国税庁タックスアンサー(青色申告制度)/
        http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2070.htm
  

 B 源泉徴収

  所得税は所得を得た者が申告し納付する方式となっています(申告納付制度)。しかし
 、給料については、その支払者が本人に代わって徴収納付、清算しなければならない制度
 (源泉徴収制度)となっています。

  源泉徴収に関する詳しいことは、国税庁のホームページをご参照下さい。
   ⇒国税庁 源泉所得税/
        http://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/gensen.htm
  

 C 消費税

   消費税とは「国内で」「事業者が」「事業として」「対価をもらって」「資産の譲渡
  ・資産の貸付・サービスの提供をしたとき」、その取引が消費税の対象となるもの(対
  象外取引は不課税取引と呼ばれる)です。なお、この条件を満たす場合でも、特定の取   引は非課税取引とされています。
   日本の消費税は、受け取った(預かった)税額から支払った税額を引いて納付すると
  いう方式により、取引の各段階で発生する付加価値分のみに税がかかり、累積しない仕
  組みとなっています。また、現在5%の税率だが、中身は消費税4%と地方消費税1%   となっています(徴収納付は一緒に行われます)。
   取引のたびに発生する間接税なので、負担するのは取引の相手方ですが、実際に納税
  するのはそれを預かった事業者側となります。帳簿方式により帳簿上で計算し、毎年ま   とめて税務署に申告納付します。計算した結果、納付額がない、あるいは還付となるこ   ともります。    消費税に関する詳しいことは、国税庁のホームページをご参照下さい。     ⇒国税庁 消費税/         http://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/shohi.htm
  

2 その他の税務

  

(1)予定納税

   前年の確定申告による所得税・法人税、消費税、事業税、住民税の納付額が一定額以上
  あった場合は、税によって多少異なるが、おおむね期の半分が過ぎた日から2か月以内に
  翌期分の半分に相当する額を納付しておかなければならない制度となっている。もちろん、
  これはその期分を確定申告する際に清算される。
  

(2)固定資産税

   土地、建物を持っている場合には、年4回に分けて納付しなければならない。
  

(3)印紙税

   印紙税は契約書、受取書等の課税される文書を作ったときに徴収される。すなわち印紙
  を貼ることが納付である。
  

(4)税務調査

   税務調査は1〜2日ほど税務署から調査官が来て、税務署に提出した各年度の決算書と
  帳簿、領収書等の原始資料との照合等を行なう。その場で終わる場合もあるが、たいてい
  は調査官が資料を持ち帰り検討して、後日問題点を指摘することが多い。
   なお、設立の年にはまず税務調査はないと思ってよい。

3 適正な税務手続き

   適正な申告をするには、青色申告を行うとともに、収入・必要経費(法人は損金という)
  を漏らさず計上する。必要経費は所得を得るための支出で、次のようなものがある。
売上原価
☆売上原価とは
 販売した商品の仕入代金、製造原価
  ≪計算式≫
     売上原価=(年初の棚卸高)+(その他年中の仕入高)−(年末の棚卸残高)

☆棚卸資産の評価
 ここで、同じ商品でも仕入れ時期や相手により仕入額が異なるのが普通のため、棚卸高をどう把握するか、棚卸資産評価の方法を決めておく必要がある。
 税務署に評価方法を届出しない場合は、最終仕入原価法で評価することとなる。
  ≪棚卸資産の評価方法≫
    1.原価法
       原価により評価する方法。個別法以外によるときは棚卸資産の区分(商品や製品、半製品、
     原材料など)の同じものは同一の評価方法となる。d からf までは製造業で原材料の原価計算
     に使われ、その他の業種では一般に利用されていない。
      a 個別法
         棚卸資産一個一個の仕入額を把握しておき、棚卸時にそれを集計する方法。1回の取引
        で大量に取得され、かつ、規格に応じて価格が定められているようなものには、この方法は
        使えない。
      b 先入れ先出し法
         先に仕入れたものを先に販売するという仮定にもとづき棚卸評価する方法。棚卸時には年
       度末に近い仕入れ品が残ると考え、年度末に近い方からの仕入額と数量を、残存品に適用し
       ていく。
      c 後入れ先出し法
         後から仕入れたものを先に販売するという仮定にもとづき棚卸評価する方法。棚卸時には
       年度当初に近い仕入れ品が残ると考え、年度当初に近い方からの仕入額と数量を、残存品
       に適用していく。
      d 総平均法
         年度当初の棚卸資産の取得額と年度中の総仕入額との合計額を平均し、棚卸資産をそ
        の平均単価で評価する方法。
      e 移動平均法
         総平均法の変形で、年度中に仕入れる都度、その時に残っている商品と新たに仕入れた
       商品とについて平均単価が改定したものとして改定計算し、最年度末の改定単価に棚卸数量
       を掛ける方法。
      f 単純平均法
         年度中の異なる仕入単価を単純に平均して出した平均単価に、年度末の棚卸数量を掛け
        る方法。
      g 最終仕入原価法
         最年度末に仕入れた単価に、年度末の数量を掛ける方法。
      h 売価還元法
         原価が分からない場合に適用する方法で、年度末における販売予定額と通常生ずる差益
       率を使って計算する方法。
    2.低価法〔青色申告のみ選定可〕
       あらかじめ選定した原価法で評価した額と、その年度最終日において通常取引されている時
      価とを比較しいずれか低い額を棚卸高とする方法。
    3.その他
        その他特殊な評価方法も認められるが、一般的ではない。
減価償却費
☆減価償却とは
 事業用に使用する固定資産は、その取得費を取得時点で経費とすることはできない。届出の償却方法により、その耐用年数に応じた償却率にもとづき、毎年少しずつ必要経費としていく。それが減価償却費というものです。
 平成19年度の税制改正において、減価償却資産の償却費の計算における「償却可能限度額」及び「残存価格」が廃止され、新たな償却の方法により減価償却費を計算することとされました。
 ただし、使用可期間が1年未満のものや取得価額が10万円未満のものは、取得した年に全額必要経費に算入することができる。

☆償却方法
 資産の区分ごとに選定する償却方法を税務署に届け出る。
 ただし届け出ないと、個人事業においては定額法が、法人においては定率法が適用される(一部除く)。
   ≪償却方法の計算式≫
     1.定額法
         償却費=取得価格×定額法の償却率×(業務の用に供された月数÷12)
     2.定率法
         イ(取得価格−減価償却費の累積額)×定率法の償却率=調整前償却額
         ロ取得価格×耐用年数に応ずる保証率=償却保証額
         ハ調整前償却額≧償却保証額のとき
           償却費=調整前償却額×(業務の用に供された月数÷12)
          調整前償却額<償却保証額のとき
           償却費=改定取得価格×改定償却率×(業務の用に供された月数÷12)
          ※いずれも未償却残高が1円になるまで償却します。
     3.旧定額法
         償却費=(取得価額の90%)×旧定額法の償却率×(業務の用に供された月数÷12)            
     4.旧定率法
         償却費=(取得価格−減価償却費の累積額)×旧定率法の償却率
                ×(業務の用に供された月数÷12)
     5.その他
         その他特殊な償却方法も認められるが、一般的ではない。
その他
〔法人〕役員報酬、〔個人事業〕青色専従者給与、従業員に対する給与、広告宣伝費、荷造運賃、貸倒金、福利厚生費、事業用固定資産の損失、水道光熱費、接待交際費、寄付金、旅費交通費、修繕費、地代家賃、消耗品費、通信費、損害保険料、利子割引料、損害賠償金、所属団体の組合費等、固定資産税、事業税、消費税、印紙税、自動車関係諸税、〔青色申告者だけ〕貸倒引当金・退職給与引当金その他の各種引当金・準備金、など
  ※ 必要経費は名目ではなく、実質的に事業の業務に必要なものが認められる。また、現実に支払った
   額ではなく、その年度において支払うべきことの確定した金額が、その年度の必要経費となる。
   必要経費として認めてもらうには「こういう目的でいくら使った」という証明をするこ
  とが肝心。領収書がないもの(業務の必要上支払った香典など)は、必ずそれに代わるメ
  モを残しておく。

    ※注意点: 個人事業では、事業を行うためにかかる必要経費と、個人の生活費の境目
        がはっきりしない場合が出てきがちである。わかリやすい例としては、1階
        が事業所で2階が住居といった店舗付き住宅を借りている場合の賃借料のど
        こまでが必要経費かが問題だが、こうした場合、借りている建物の面積の5
        0%以上が事務所に使われている、事業所に使われている部分が明確に区分
        できる、という二つの条件を満たしていれば、必要とされる部分については
        必要経費と認められる。

4 個人・法人事業の届出書類

    個人及び法人事業に係る税務手続に関する書類の提出時期や書類の書式については、国税庁ホーム
   ページに情報提供されていますので、こちらをご参照下さい。
     ⇒国税庁 税務手続に関する書類の提出時期/
         http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/teishutsujiki/presentation.htm



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