◆新事業開拓について

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 「新事業をスタートさせたい」そう考える理由や要因はさまざま。たとえば、従来からあった業種業態だが、自分ならもっとうまくやれる。退職を期に積み上げたノウハウを生かし事業を立ち上げたい。新しい商品製品、サービスを提供したい。従来は商売になるとは認識されていなかった新しいビジネスモデルを考案したので現実の市場で検証したい、など。
 しかし、いくら事業をやりたいと考えても、事業経営の才能がない、必要資金の調達ができない、業として行なうことが法律で禁じられている、社会への登場が早過ぎて需給ミスマッチで終わるなど、かならずしも事業としてうまくいくとは限りません。

◎強みが必要

 何か「強み」をもてない事業であれば、その事業は立ち上げるべきではありません。モノが行き渡り、実質的な所得の伸びがない現状では、何らかの「強み」のない事業が成功する可能性は極めて低く、無理な開業は社会の混乱を招くばかりです。

◎足元からの着眼

 比較的うまくいきやすいのは、これまでの仕事や暮らしの中であなたや周囲の人が感じていた不便や不満を解消するものを事業化することでしょう。知っている分野だから、提供する価値について大きくピントを外すことはないだろうからです。また、少なくても自分ひとりはそのユーザーとなりたいと思ったはずだからです。
 既に出来ることはやり尽くしたと思われる分野でも、ちょっとした工夫、意外な発想の転換で新しい事業展開が可能です。
 たとえば、濃い味付けが好まれるという定評がある地域では、既存飲食店は過去の経験にこだわっているため、逆に薄い味付けの店は新鮮で一定の需要が見込まれます。でも、味付けが薄い店であることを主張しなかったらどうでしょうか。味付けを間違える店と見て、薄い味付けを好むユーザーであっても、もう二度と近寄ろうとしないかもしれません。「食べれば分かる」というのは、選択肢の少なかった昔の話しでしょう。

◎アイデア

 良いアイデアはあるが資金がない、経営力がないという場合、無理に自分で事業を興そうとせず、他の人に活用してもらうことを考えましょう。
 新しいアイデアなら、本当に新しいのか、その新規性について調べてください。発明、工夫の類であれば先願主義(同じものであれば、先に出願手続きした方を保護する)により権利保護(特許権、実用新案権といった工業所有権)されています。先願主義のため、無駄をおそれず他の出願があるか否かにかかわらず出願してしまうという方法も考えられます。
 しかし、工業所有権は必ずしも排他的なものではなく権利者の承諾(一般に使用料を支払う)を得て、活用されていない他人のアイデアをあなたが世に送り出すという方法もあります。

◎資金支援

 補助金や助成金という公的金銭支援を当てにして表面的にとりつくろって安易に事業をスタートするのはやめてください。金銭支援がなければ開業できないというのは、営利事業としてはいかにそのビジネスプランが杜撰であるかを物語っています。
 営利事業に対する補助金や助成金制度は、その事業に対する投資が社会の利益(金銭だけでなく)として還元されることが大前提で、社会の利益となる事業を育成する誘導策としてあります。そのため税金等公的資金の投入が認められるのです。ただで金をもらうのが面倒なのは当然です。安易にもらえたでは、あなたの税金が生かされないではないですか。
 だからといって卑屈になる必要はありません。自分の事業が社会の利益に貢献するという信念があり、より貢献する事業として発足するための資金が不足であれば、堂々と資金支援を求めましょう。公的な金銭支援は社会的な期待を背景として行なわれるだけに、その他の支援措置がセットになっていることが多く、技術支援、試験研究、販路開拓などの面でも公的支援が得やすい環境となります。

◎電子商取引

 このマニュアルを見ている人であれば、Eコマース(電子商取引)立ち上げもお考えでしょう。
 ご存知のように、電子商取引も基本的には従来型取引手法と同様な法規制を受けます。Web上での販売行為には訪問販売法(の通信販売の形態に含まれる)が適用されます。これについて、業界団体でガイドラインを作成しており、政府もその遵守を求めていますので、ご覧ください。その他、取り扱い商品等については、個別規制法が適用されます。
 ⇒(社)日本通信販売協会 http://www.jadma.org/

 また、公正取引委員会では 「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」の中で、消費者向け電子商取引が消費者から信頼を得られるためには、事業者から消費者に対して商品選択上必要な情報が適切に提供されることが重要であるとの観点から、BtoC取引における表示について景品表示法上の問題点を整理し、事業者に求められる表示上の留意事項を公表しています。また、その他重要な文書が掲載されているので、かならず見ておくようにしてください。
 ⇒公正取引委員会 http://www.jftc.go.jp/

 確かに商品販売ではユーザーにとって買物するのに場所や時間に制約を受けないバーチャルショップ(オンラインショップ)はありがたい存在です。規格品・大量生産品であれば、信頼できるショップの中からもっとも安く、納品が早く、支払い引き取りが簡便なショップに発注するのではないでしょうか。
 また、どうしてもすぐに欲しい本が絶版だったという場合にも、どこかに在庫があればすぐに配達されます。その場合、送料の負担が必要でもユーザーは納得するでしょう。特定の卸との流通ルートしか持たない現実ショップを探し回っても入手できなかったのが、オンラインショップでは簡単に実現されています。
 すなわち、バーチャルならではのメリットを享受できる部分については、電子商取引はユーザーにとって新たな購買チャネルとしてまちがいなく定着するでしょう。
 オリジナル商品、希少商品であれば、そのショップの発信するストーリーに共感して注文することもあるでしょう。香りが絶対であるはずの香水、そのオリジナル商品を販売するオンラインショップが売上を伸ばしているといいます。この事例は、Web販売になじみにくい商品を扱おうとする者にとって励みになることでしょう。
 最大の問題は、常時接続のコストがまだまだ高いことでしょう。ダイヤルアップ接続でネットサーフィンしながら購入するという方法は、家計圧迫からはばかられます。いったん常時接続を導入してしまえば、そのユーザーのWeb購入の度合いは飛躍的に高まることと思われます。

 ユーザーからの信頼を得る手段として、評価の高いオンラインショッピングコミュニティに出店する方法があります。また、SEO(検索エンジン最適化)対策により、自店ホームページの検索上位表示を目指すことも売上を上げる方策のひとつです。

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