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商工連ニュースにいがた掲載記事

[まちの元気じるし]越後工業 株式会社
出雲崎町商工会(商工連ニュース21年10月号掲載)

新潟県三島郡出雲崎町は県のほぼ中央部の日本海に面し、良寛さんの町として知られ、また松尾芭蕉の奥の細道にも登場する海の町です。
今回は、三十年にわたり製造業として発展し、その技術を異業種にも活かそうと、今年、福祉分野に本格参入した越後工業(株)をお訪ねし、代表取締役の木川勇三さんにお話を伺いました。


会社全景
  越後工業 株式会社

  949-4351
   
新潟県三島郡出雲崎町大字121-2

    TEL:(0258)78‐4011

    FAX:(0258)78‐4426
    URL:http://www.sukesan.jp


木川勇三 社長

プレス技術を活かして

燕市の洋食器加工会社に就職し、プレス加工や鋳物の技術を身に付けた木川社長は、昭和54年4月に現在地で創業しました。
農機具等の部品加工の下請けに始まり、やがて大手自動車部品メーカーから、鋳バリを取り除く仕事を請負いました。バリ取りは手作業のため、均一に仕上げる技術が必要ですが、その割に採算が…。そこで、これまでの経験と、木川社長曰く、「怠け者の発想」で、プレス加工を取り入れたらどうかと考え、早速試作品を作ってメーカーに提案。指導を受けながら改良を重ね、地方工場では日本初となるプレス化を実現させました。
生産性向上と製品の安定化により、付加価値が加わり、自社の信頼度もUP。仕事量が三十倍に増え、後に品質管理まで任されるようになり、会社は軌道に乗りました。

異業種への参入

自動車業界への将来性を感じつつ、製造業として自社製品を持ちたいという思いから、約十年前にゴム製品加工を始めたところ、ある開業医から、滑りにくい杖のアイディアを記した一通の手紙が届いたそうです。半信半疑ながら連絡を取り、商品化に取り組んだところ、遂に自社製品・第一号となる『助の杖(すけのじょう)』が誕生しました。既に特許を取得し、人気商品になっています。
「自社の技術は、どんなアイディアも形にすることが出来る!」と大きな自信に繋がりました。
これを機に福祉分野へ関心を持ち、講習会等に参加するうちに、車いすに着目。利用者はベッド等への移乗に不自由さを感じ、介護者の負担にもなっている現状を知り、それらを軽減するべく研究を始めました。車のホイールをヒントにひらめいたのが、“開閉する車輪”の発想でした。
実際に試作品を持って、施設や病院で意見を聞いて回り、展示会でもアンケート調査により情報を収集。安全性を確保しながら改良を重ね、車いすの『輪助(わすけ)』が完成しました。
不便を解消した柔軟な発想と、技術により、また新しいアイディアを形にすることができました。
 
〜『輪助』の車輪開閉の様子〜
ワンタッチでジャッキアップ → 車輪をクルッと回して開閉位置を合わせます。

 

“越後工房”として

『輪助』によって、車いすの移乗が楽になると、行動範囲も広がる → 車いすで過ごす時間が長くなる。

これら一連の流れから、乗り心地はどうだろうかと、新たな疑問が浮かびました。一般的に車いすは移動手段の一つであり、長時間の使用は考慮されていないのが実情。そこで、専門家の指導を受けながら人間工学の考えに基づいた、オーダーメイドの車いす作りに取り掛かりました。少数でも人の役に立つモノを作りたい、という気持ちの表れです。
価格は多少高くなりますが、越後工業改め『越後工房』として、使う人の立場になって個々の価値観に合った“納得づく”の製品を作り上げていきたいと考えています。
開発した車いすは、今年、県の健康関連ビジネスモデル推進事業に採択されたのを機に、いよいよ販売に向けて動き出しました。
福祉分野に踏み込む中で、身近になったペット用の介護用品も開発済です。
「これまで様々な商品開発(福祉用品を含む)を考え、100件近い特許を取得してきました。与えられた仕事をこなしているだけでは先が見えてしまいます。自社製品の有無が強みになり、対外的な評価も違うし、技術に対する意識レベルも上がります。」と、大変ご満悦の表情で話してくださいました。

夢は大きく

今後についてお聞きしました。
「世界的なブランドは、歴史と技術があって、意外と規模は小さいところが多いと思います。出雲崎町のブランドは車いすの『輪助』と言ってもらえるように頑張っていきたいです。夢は大きく!百年二百年先まで、細く長く続いていけたらいいですね。」と、語って頂きました。
限られたニーズでも、困っている人のためになりたい、という思いが製品化され、技術力を持ち合わせた細やかな対応に、今後も期待が寄せられています。