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商工連ニュースにいがた掲載記事

[まちの元気じるし]ラーメンつり吉
川口町商工会(商工連ニュース21年5月号掲載)

新潟県のほぼ中央部に位置する北魚沼郡川口町は、信濃川と魚野川の合流する水と緑が豊かな町です。
平成16年の中越大震災では、震源地として甚大な被害を受けました。震災から5年、町は復旧から復興へ向けて進んでいます。
今回は、異業種への挑戦、震災から再建を遂げた「ラーメンつり吉」をご紹介します。


ご主人の喜多村利幸さん
  ラーメン つり吉

 949-7511
 
新潟県北魚沼郡川口町和南津953
 
TEL:0258-89-3700

 
営業時間:11時〜19時半  無休
 (スープがなくなり次第終了)

 

綿業から麺業へ

ご主人の喜多村利幸さんは、釣りや登山など多趣味な56歳。高校卒業後に繊維会社へ就職し、結婚。一男二女に恵まれました。20代半ばで家業の製綿業を継ぐため家に入りますが、両親が創業した頃とは時代も変わり、新規開拓に努めるも現実は厳しかったそうです。
さらに数年後、相次いで両親が他界。幼い子供を抱え、このままではいけない、出来ることから行動しようと一念発起し、自宅の休耕田で鯉を飼っていたことから釣堀を始めました。常連客は出来ましたが、安定した収入には結びつかず…。考え、悩み、友人らのアドバイスを受けて辿り着いたのが「ラーメン」でした。釣り客の要望で出前を頼むこともあったため、それなら自分でやってみようと修業と研究を重ね、店を開いたのが40歳の時でした。
「四十の手習い、しかも前厄だけど…と、占い師に手相を見せると、豊臣秀吉と同じ天下筋がある、いい手相だと言われてね。ただ、始めた頃はお客さんも少なくて、奥で布団を打ちながらやっていました。やがて、平日に来るお客さんが休みに家族を連れて来てくれるようになり、商売は軌道に乗っていきました。」と、当時を振り返って話してくださいました。

再建

開店から11年経った平成16年の秋に地震が起き、店舗は全壊状態になりました。発生時は、火や熱湯を扱っていたにも係わらず、店内で誰ひとり怪我人がなかったことは幸いでした。
震災の片付けや炊出しに追われる中、早く営業してくれという電話が鳴り、さらに寸断された道路が復旧すると、近くまで来た方たちから、留守を心配するメモや、営業再開を望むメッセージがたくさん寄せられ、今でも大切にしてあります。 
多くの声援に後押しをされ、店を仮修繕して営業を再開。翌年には新しい店舗が完成し、現在に至ります。
「ここまでやって来られたのも周りの人達のお陰です。」幾度の転機を経験したご主人は、感謝の気持ちを忘れません。
 

お客様第一の心

店は年中無休で、毎朝6時半から仕込みに取りかかります。ゆっくり休む時間はないのではと思いきや、
「うちには優秀なスタッフが揃っていますから、自分は仕込みが終わればいなくても大丈夫。イヤ、いない方が大丈夫なのかも…。」と冗談めかすご主人。週に4回は食べに出掛けるという根っからのラーメン好きで、他店の味はもとより、店内の様子を見ることも参考になるし考えさせられると言います。

商売で一番大切なことはなんでしょうか、とお聞きしたところ、
「お客様の満足と、お客様への思いやりです。この商売は、味だけじゃなく、清潔さやスタッフの対応も良くないとね。ニコニコ笑顔で帰ってもらいたいですから。地域性もありますので出前もしています。自分達に出来ることで喜んでもらえるなら、出来る限り応えたいと思っています。」と、話してくださいました。
取材は平日にも係わらず、11時の開店と同時に店内は活気付いていました。
お客さんとの何気ないやりとりや会話からも、思いやりの心が伝わってくるようで、その気持ちが訪れる方々へ届くことが、人気店となる秘訣でもあると感じました。