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商工連ニュースにいがた掲載記事

[まちの元気じるし]株式会社井口製材所:越路町商工会(商工連ニュース20年3月号掲載)

越後平野の南西に位置する長岡市の旧越路町は人とホタルが共存するまちづくりを目指し地域一丸となって自然を守る活動をしています。
今回は、雪国で木を育て、古民家等に使われていた材木・古材(こざい)の再生にも注力する(株)井口製材所を訪ね、その魅力について代表取締役の井口由久さんにお話を伺いました。

  株式会社井口製材所

  〒949‐5416
  新潟県長岡市不動沢568‐1
   TEL 0258‐92‐2357
   FAX 0258‐92‐3419

代表 井口由久さん

文化と伝統を守る

 昭和20年に井口社長の父が設立した(株)井口製材所は、創業時から神社仏閣に用いられる特注材も取り扱い、倉庫には普通ではお目にかかれないような欅の大木が常備されています。時代の流れと共に国外生産資材も扱うようになり、現在では多種多様な木材を取り揃えています。
 材木屋の長男として生まれ高校を出たら家業を継ぐのが当たり前だった時代に、親に頼んで大学まで行かせてもらった。幼い頃はコックにも憧れたけど自然とこの道を選んだと言う井口社長。親父からはっきり言われたことはなかったが結局はうまく引っ張り込まれたような気もするけどねと笑顔を見せます。
 製材のプロとして木をこよなく愛し、そのまなざしは厳しくも優しくもある。日本には長い歴史の中で生まれた文化がある。建築の世界でも職人の厳しい目利きと技によって本当に素晴らしいものが造られ、現代も生きている。その伝統を大切に守り続けたいと語っていただきました。

古材の再生

 檜など大半の木は伐採して百年くらいは強度を増していくと言われています。家屋解体等で出る古材の殆どが処分されるのが現状であり、まだまだ利用できる物もあり廃棄するのは惜しく環境保護の点からも何とか再利用したいと、井口社長は請負った解体工事の際の古材や古建具等を保管し手入れをしてきたと言います。古民家ブームの中、新材にはない風合いが和・洋・モダンと何にでも馴染み、一般住宅の梁やアクセントにする人も増えてきたと言い、まだ少数派かもしれないが古材が再生されていくのは嬉しい限りと微笑む井口社長。手作業で丁寧に造られた古建具や古民具、設備のない時代に一本一本手斧(ちょうな)を掛けた跡が残る古材は歴史が感じられ、心が和む。マナーやモラルの問題を耳にするたび、物を大切にする意識の薄れではないかと感じ、古材を通して優しい心が育まれたらと願う。昨年3月、HPを介して全国の古材を網羅する「古材倉庫」に新潟店として加盟したのも、その魅力を知って欲しいという思いから。
 新潟の豪雪地域で育った木は層が細かく丈夫で、その古材となれば更に長い歳月を雪の重みに耐えた一流品。昨年は遠く九州からも引き合いがあったと言い、新潟ブランド古材として広めていきたいと力が入ります。


家屋解体等で集めた古材

古建具など

木の個性を活かして

 高度成長期になり物の規格化が進むと、資材でも曲がりや節のある木材が規格外と言われ敬遠されるようになってしまった。しかし井口社長は、どれも同じ木に変わりはないと利用価値について考えてきたと言います。もともとの色や穴・節なども全て木の個性であり見方によればいい味になるという発想から、これらを扱う新分野「けやき屋」を始め、個性的な木のおもしろさを発信している。更にそれらを利用して家具や作品を造る「ウッドアレンジ」も立ち上げた。発想の転換をすることでマイナスと言われた部分がプラスになり新しい価値が生まれてくると言い、例えば穴や曲面も磨けば美しい形状になるし、節を模様に見立ててテーブルや飾り棚にしたり…。皆さんひとりひとりの発想で木の個性が限りなく広がっていきます。
 人と木の、新しい出合いの場です。

無限に膨らむ構想

 木というモノであっても、心に届くというカタチがあってもいいんじゃないか。
 長く製材業を営む側で、倉庫に横たわる木材を見つめながら描いてきた構想を、ひとつ又ひとつと実現させていく井口社長。お陰で休みもないけど新しい出会いと発見が楽しくて仕方がないと言い、気分は地域の芸術家といったところかな。どれもまちの企業だから出来ることだと思う。今は採算ベースで考えたら全く合わないよ。と苦笑します。実際に見てみなければ分からないからと県外へも出向く行動派ですが、そのバイタリティはトライアスロンをやっているからかも。お出掛けはいつも奥様と一緒という愛妻家の一面もあります。長男が、親父の仕事おもしろそうだね、一緒にやりたいと言ってくれたことも励みとなり、更なる夢に向かってまい進する井口社長の瞳はキラキラと輝いています。