Tokamachi Center Web    

商工連ニュースにいがた掲載記事

[まちの元気じるし]カールベンクス&アソシエイト有限会社:松代町商工会(商工連ニュース17年6月号掲載)

4月1日に新設合併により十日町市となった旧松代町は、東頸城丘陵地帯に位置し、東西を国道253号線やほくほく線が走り、美しい棚田風景などに代表される自然豊かなところです。
上杉謙信が支城として活用したとされる松代城や国の重要文化財に指定されている松苧(まつお)神社など歴史を物語るものも多くあります。
この自然や歴史・文化の息づく松代で古い日本の民家を残し、再生することを手掛けているカール ベンクス&アソシエイト汲フ代表取締役カール ベンクス(ドイツで生まれ育つ)さんを訪ね、お話を伺いました。

 カールベンクス&アソシエイト有限会社
  住所:新潟県十日町市室野5416
  FAX 025-598-2690
  URL: http://www.k-bengs.com/
  (お問合せはFAX又はメールでお願いします)

古い民家を探して

 建築デザイナーとしてヨーロッパや日本で活動してきたカールさんが松代に移住したのは、古い民家を探しに来たのがキッカケと伺いました。以前から日本の文化に関心を持ち、経済成長とともに古い木造建築が失われていく現状を残念で悲しく思っていたカールさんはこの地に住み、建築デザインをしています。事務所や自宅も古民家を再生したもので、自然の形を活かした太い梁や太い柱などは、どこか懐かしさや安らぎを与えてくれ、再生前の写真からはとても想像できない建物に生まれ変わっていました。松代での生活を聞くと「とても住み良いところです。豊かな自然に囲まれた静かな農村。冬は雪も多いですが苦になりません。考え方ひとつで雪との付き合いも変わってくる。ますます楽しさを感じています。」と話して下さいました。

文化や歴史を後世に伝える

「古い家のない町は、思い出のない人と同じです」とは、画家の東山魁夷がわたしにくれた言葉。「古い=価値がない」のではありません。古いものは歴史や思いがつまった単なる“モノ”以上のものなのです。民家の再生は、単なる建物の再生ではなく、日本文化の素晴しさを後世に残し、伝えていくものです。骨組みをそのまま活用して中の設備を現在の生活スタイルに合わせたものに取替えていくことは可能であり、古い建物に使われている自然木はそれに耐えうるものです。月に一度開催している相談会にも多くの方が訪れているとお聞きしました。

古民家村構想

 カールさんは家についてこのように話して下さいました。「家とは、寝泊りできれば良いというものではありません。家族が集まり、安らぎを持てる場所でなければなりません。そのためには自然の材料を使うことが必要です。」また「経済優先が使い捨ての時代を生み、人々の考え方までも変えてしまったのでは」とも。「新しいものを開発していくたびに職人の技術が必要なくなり消えてしまう。今の建築は大工の技術を必要としなくなり、壊して新しいものを作る。日本の大工は木造建築に秀でた技術を持ち、棟梁と呼ばれる人達の職人技が失われてしまうのは残念である。この技術を若い人達に受け継ぎ、残していくためにも古い建物の再生が必要なのではないかと思う。」古民家村構想はそのひとつでもあり、観光スポットを作るのではなく、実際に住んで農家の人々とともに田舎暮らしができる。そんな「まちづくり」をしながら、文化や技術を残していこうというものです。

むかし風の新しい家を

 これからは、古い家の再生だけではなく、地元の木材を使い、職人の技術を取り入れた家を建てることにも力を入れていきたい。古い家の再生には障害もある。空き家となっていても所有権がはっきりせず、購入できないケースも多くあるという。「素晴しい技術を持った大工さんや職人さんが沢山いますし、この土地で育った木は冬の降雪などの厳しい環境・気候の中で強い材質の木材となります。この木材を使い、土壁を組み合わせて、むかし風の新しい家を建築していきたい。」と話すカールさんに、文化や技術を伝え、残していくことの大切さや個性あるまちづくりなど地域に対する想いを感じながら企業訪問を終えました。