Tokamachi Center Web

商工連ニュースにいがた掲載記事

[まちの元気じるし]中越陶器:田上町商工会(商工連ニュース16年2月号掲載)

南蒲原郡田上町は、新潟市と長岡市のほぼ中央に位置し東は新津丘陵により五泉市・中蒲原郡村松町、西は信濃川を隔てて白根市、北は中蒲原郡小須戸町、南は加茂市と接しています。薬師の湯・湯田上温泉は古くから有名で多くの湯治客に親しまれ、豪農の館椿寿荘や護摩堂山のあじさい園は季節毎に賑わいをみせています。
ここ田上町で環境に優しい製品を造る中越製陶株式会社をお訪ねし、代表取締役の佐野一雄さんにお話を伺いました。

中越製陶株式会社
南蒲原郡田上町大字川船河甲1391-2
  TEL  0256-57-2101
  FAX  0256-57-2453

素焼土管

 中越製陶株式会社は昭和37年創立。農業用暗渠排水の素焼土管や各種コンクリート二次製品の製造を手掛けています。
田上町も昔は安田町と並ぶ瓦の産地で、同社も以前は約百年以上の歴史を誇る老舗瓦製造業者だったそうですが、時代の流れもあり今から約18年前に瓦からは撤退したそうです。往時たくさんあった瓦工場は、その技術を生かし暗渠排水等に使われる素焼土管を製造していたそうです。ところが今から約40年前、敷設の簡便性などから塩ビ管の使用が急速に広まり業者の多くが廃業に追い込まれました。
 しかし、その後塩ビ管では排水が効かないという声が出始め、再び土管の利用が広まっていったといいます。素焼土管は土で出来ているので環境にも優しく、無機質・多孔質で目詰まりがなく丈夫で耐用年数は50年とも言われています。その良さが再認識され、圃場整備事業などもあって需要も増えているそうです。現在、工場はGWと盆正月以外はトンネル窯の火を落すことなく24時間生産で多くの受注に対応しているそうです。土管の時代は終わったと言われてからも細々と造っていただけと佐野社長は控え目におっしゃいます。

静かな側溝

 昭和44年にはコンクリート二次製品の製造に着手。その後、県農地部指定工場、JIS認定工場となり、様々な製品を製造しています。中でも私達の生活に身近な製品として、騒音のない「リボーン側溝(U字側溝)」があります。これは、側溝本体と蓋の接触する部分の角を丸く(曲面構造)することで蓋のガタツキをなくし、車が通る時などの騒音を解消した側溝です。蓋のガタツキによる破損が無くなり側溝自体が長持ちし修理費等も抑えられ、更に従来品よりも取付けが簡単で安全設計になっているそうです。佐野社長はテレビで偶然このアイディアを目にして、翌日には考案者のところに出向き、直談判して権利を譲り受けたのだとか。不景気で公共事業は減っているが、この側溝のお陰でなんとかやって行けると話す佐野社長の笑顔も一段とほころびます。

環境配慮型農業への新展開

 長年の土管製造を通して農業環境についても考えてこられた佐野社長は、今「酸素農法(エアージェクションシステム)」の普及に力を入れています。これはアメリカで開発され欧米では既に定着しているシステムで、専用の装置で水に酸素と液肥等を混合させて、それを土に埋めたドリップテープを通して植物に与えるというもの。テープの穴から点滴のように水が出て根元に均一に行き届く仕組みになっています。これは通常の潅水方法と比べて水分の蒸発が少ないので節水効果が大きく、肥料代が約80%も節約でき、農薬も最小限で済むなど環境にも健康にも優しい栽培方法と言えます。定期的に「酸素」を与えることで、土の中の良質なバクテリアが元気に働いて、良い土壌環境が維持できるのだそうです。その結果、植物の育ちが良くなり収穫量が2〜3割増という成果も出ているのだとか。まさに農家にとっては一石二鳥にも三鳥にもなるシステムだと説明してくださいました。

 残留農薬等の問題から、それに代わる新しい土壌消毒方法として「オゾンジェクションシステム(土壌活性化装置)」が開発されました。これは酸素農法にオゾン生成装置を組み合わせたシステムで、オゾンガスを土の中に送り込み、その酸化作用により有害線虫や悪い病原菌等を抑制させるものです(土壌菌抑制)。従来の方法と違い、土に住む微生物を全滅させるのではなく減らすという考え方なので、消毒後のガス抜きや優良微生物の復元という作業が不要になるのだそうです。また作業時間も、今までは播種や植付けの前に蒸気の熱により何日もかけて行なっていましたが、これは数時間で出来て効率的。栽培中でも土壌消毒が可能になり作物の病気も減るのだそうです。

 効率化や、品質向上にも貢献出来る新しい栽培の方法として、佐野社長は県内の生産組合等を中心にPRしていきたいとお考えだそうです。
現代はバリアフリー社会とも言われ、障害者やお年寄り、子供達が安心して暮らせる「優しい」まちづくりが求められています。酸素農法などこれらのシステムは、人と自然に優しい減農薬・減化学肥料で作物の安定した収穫を可能にするという、農家にとってはまるで救世主のようなものだと考えています。他県でも導入され始めており、今後新潟県の総代理店として県内での普及に努め、広く定着させたいと語る佐野社長。これからも長い目で環境問題について考え、人と自然に配慮した「優しい」モノづくりを続けていきたいと意欲を見せます。

 取材では作業中の工場内も見学させて頂き、お声を掛けて回られる佐野社長と迎えてくださった従業員の方々の温かな雰囲気が大変印象的でした。佐野社長の「優しさ」への想いが社員の皆さんからも伝わってくるようでした。