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商工連ニュースにいがた掲載記事

[まちの元気じるし]シンコー電気株式会社:見附商工会(商工連ニュース15年5月号掲載)

今回ご紹介する、VTRヘッドの製造や機械加工を行っている企業「シンコー電気株式会社」さんは、新潟県の中央に位置する見附市と、南へ三〇Km程離れた堀之内町に工場があります。
見附市は繊維と農業を牽引として発展してきたまちで、総合繊維産地として高い評価を受けています。また、堀之内町は遥かに越後三山を望み、清流魚野川に育まれてきた自然あふれる町です。


社訓
シンコー電気株式会社

〒949‐7402
本社:北魚沼郡堀之内町田戸61‐4
    TEL 02579‐4‐4675

見附工場:見附市福島町430
    TEL 0258‐66‐2845

会社沿革

 社長の小林正晴さんは一九七二年、自らの可能性を発揮しようと大手電気メーカーから独立して、故郷北魚沼郡堀之内町に二十四才の若さで創業されました。当初は小さなプレハブ工場で生産設備を借りて、リレー用コイルの製造をしていたそうです。当時の従業員も以前の同僚を含め数名程度で、決して大きくはない企業でした。その後ステレオやFDD、そしてVTR用の磁気ヘッドの生産を開始しましたが、約二十年間は100%下請の企業として歩んできたそうです。
 しかし九〇年代に入ると、ボーダレス化の波が押し寄せ多くの企業が海外へと工場を進出していきますが、国内でのモノづくりをやっていきたいと想っていた社長は、「シンコー電気でも自社製品を作らなくては」と、自社ブランドの磁気ヘッドとチップの製造を開始しました。翌年には製品の輸出も展開し、海外のお客様からも喜ばれるようになり、人件費などコスト面で不利といわれる国内生産で逆境を乗り越え、世界進出を果たしました。

技術の追求

 現在ではVTR用磁気ヘッドチップの生産は、世界トップクラスにまで成長していますが、その他髪の毛の二十分の一ほどの細さを可能にした超硬材の微細加工技術や、クリーンルームを利用した携帯電話やデジカメ用のバックライトユニットの生産など、精度技術も可能な限り追求しています。今後DVD等の普及により、VTRチップの売上台数は、半分以下になると予測され、社長は「ヘッドチップを主軸にしながらも、他の分野への進出を図っていかなくては」とおっしゃいます。
 最近では長岡技術科学大学の研究室、新潟県工業技術総合研究室と共同で、鋳込み製造法による消磁ヘッドチップの製造技術も確立しています。従来の一般的な製造方法に比べて磁気特性を高めることができ、製造コストも約四〇%減らすことができる見込です。将来的には本社工場の製造設備を整え、中国での委託加工分も国内生産に戻す計画があります。「偶然は準備のない者を助けない」と言われるように、常に自社の技術の向上を目指しています。


堀之内工場

見附工場

中古機械の活用

 同社では「中長期事業計画」により、企業のトップが将来的にこんな企業になりたい、といったものを社員に明示しています。汎用設備を改造することで価格の差別化を図る他、リース代金を将来的にゼロにするなど、財務面や人材採用の面でもコスト削減の為の計画があり、高収益で安定した企業の確立を目指しています。
 実際に工場の空きスペースには、他社から格安で入手した中古機械や機械部品が保管してあります。「中古を活用すれば日本でも競争力を持てる」との社長の言葉にあるように、これらの中古機械が同社の最大の強みでもあり、低コストでの生産を実現しています。
 

シンコー〜成長〜

 「シンコー」とは、明日に向かって輝く「新光」、伸びゆく「振興」、豊な人間性を意味した「親交」に由来するもので、いずれの意味においても成長を目指す意味を持っているそうです。また創立十周年に作成されたこれまでのシンコー電気の成長を支えてきた経営理念には、「地域社会に密着した会社(人)・あたりまえの事が、あたりまえにできる会社(人)・常にイノベーション(変革)を起し続ける会社(人)」とあります。
 先日中国に市場視察へと足を運んだ社長は、「改めて、日本でもモノ作りが可能だと強く感じた。その為にも世の中の変革に流される事なく自分自身をしっかりと見つめ直し、基本をしっかりと持つことが大切である。」とおっしゃいます。この基本から今後更に発展することが期待されます。