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商工連ニュースにいがた掲載記事

[まちの元気じるし]とちをや旅館:入広瀬村商工会(商工連ニュース14年7月号掲載)

 入広瀬村は標高一五八六mの浅草岳をはじめとする山々に抱かれた人口二千人、老齢化率(六十五歳以上の比率)三十五.七%という山間地ながら下水道普及率ほぼ百%、また山菜共和国活動など彩り豊かな地域として知られています。
 「とちをや旅館」(栃尾屋旅館)は小出町から国道252号線を福島県只見町方面に向かい、入広瀬村内の最初の集落、村役場のすぐ前に立地しています。

 とちをや旅館

北魚沼郡入広瀬村穴沢229‐1
    TEL 02579‐6‐2514

代表 飯浜芳則氏

地域活動

 代表の飯浜芳則さん(昭和二十二年生まれ)は「私は物好きでね、イベント屋みたいで家族に怒られてばかりいるんですよ。地域が良くならなくては自分も良くならないという考えからなんだけど」と苦笑。飯浜さんは商工会青年部時代、いろんなイベントを発案し実行した仕掛け人だったようです。二十年ほど前、山菜共和国の取り組みがスタートした頃はTV取材など多忙を極め、倒れたこともあったとか。「そうやって情報発信してきたからこそ、今の入広瀬があるんだと思います。」
 今も旅館経営のかたわら、民宿旅館組合長、奥只見郷ルート252を考える会代表などの役職にも就かれ、忙しい日々を過ごされています。
 国道252号線の県境「六十里越え峠」は冬季間積雪により通行止めされ、例年、ゴールデンウィークを過ぎてからやっと開通していました。ところが「考える会」はじめ幾多の活動が実り、今年は急ピッチに除雪され四月二十六日に開通となりました。おかげで連休中のガソリンスタンド各店の売上は前年の二倍になったといい、その経済効果は歴然。
 また、公共投資効果が非常に重要視される中、下田村と只見町を結ぶ国道の全通が近いことに危機感を持ち、福島県側との人的交流、経済交流を従来以上に盛んにし国道252号線の存在意義を高めようと活動されています。
 「好きだからこの地に住んで商売をしているんです。ここには良いものがたくさんあるのにそれを商品とする術を持っていないように思います。たとえば、最近お客様と一緒に行動して初めてその価値に気がついたんですが、残雪の白・新芽の青葉・山桜の淡いピンクという雄大なコントラストの風景がありました。空気もそうです。」
 飯浜さんは得意のアイデアと実行力でこれらの商品化を実現されることでしょう。

事業のあゆみ

 現代表は三代目、創業は現在地で七十五年ほど前のこと。当時は国道はもちろん、鉄道(只見線)もなかったとか。「とちをや旅館」は鉄道、国道、ダムといった工事関係者の宿泊所として、この地域の近代化、発展とともに歩んできました。なお、只見線全通は最近のことで、最後の区間(只見〜大白川)が開通したのは昭和四十六年。ちなみに村内の温泉は、平成になってから村が掘ったものといいます。
 飯浜さんは次男ですが、長男が先に村外へ出てしまったことから跡を継ぐことを決心、学校が終わってから四年間小出町の魚屋で修業し、昭和四十二年頃実家に戻って旅館の仕事に就いたといいます。「実は、茶懐石の料理人をしている鎌倉の親戚を頼って修業に行きたかったが、ちょうど豪雪が続いた時代で親を投げ出して行くことが出来なかった」というお話しからは豪雪の影響の大きさがうかがえました。
 家業に入った頃はちょうど各種工事が一段落して苦しかったといいますが、その後、村が運動施設や文化施設整備をしてくれたおかげで、昭和五十年代頃から合宿の受け入れが出来るようになり、何も分からないまま首都圏の旅行会社に営業に出かけるようになりました。エージェントが介在すると余計な手数料負担が生じますが、そんな金額には代えられない勉強や経営上のヒントを得られ大きな財産になったといいます。

これからの夢

 学生合宿、商用、観光に利用されている「とちをや旅館」は収容六十名、村内十五軒ほどの旅館民宿の中でも大きな方。一方、旅行規模がどんどん小さくなってきており、合宿も一サークルでは人数が少な過ぎてバスなどの効率が悪く、他所のサークルと一緒に来るということもまれではないようです。
 厳しい環境に立ち向かうべく飯浜さんの夢はたくさんあり、そのひとつは露天風呂。それに使う岩石は既に用意してあり、またヒノキの板もみつけてあります。しかし、機械設備に多額の投資が必要なため、高校生の子供への負担を懸念して思案中とのこと。また、少なくなった可憐な花の群生を蘇らせ美しい風景をお客様に見せたい、珍しい植物の情報や渓流釣り情報などをホームページ等でも情報発信したいとお考えです。さらに蕎麦打ち体験実施も視野に入れて準備中、今年秋には蕎麦まつり開催も期待できるようです。

読者へ一言

「私の一番の宝は、自然環境と友だち。読者の皆さんもぜひ一度、入広瀬村へおいでください。私がご案内します。」とおっしゃる飯浜さんでした。